株式投資には、いろいろな戦略があります。値上がり益をねらう成長株、市場全体に広く分けて持つインデックス、海外の株に投資する外国株など。どれが正解ということはなく、目的や投資する期間、性格によって、合うものは人それぞれです。
その中で、当サイトが取り上げているのが、国内の高配当株です。メリットは、次の4つです。
- 株価が動いても、配当という現金が入る。 株価は毎日動きますが、配当は、会社が決算ごとに決めて払います。値動きに振り回されにくく、長く持ちやすいのが良いところです。ただし、配当を出すかどうかは会社次第で、保証はありません。
- 円で受け取れて、為替の影響を受けにくい。 日本の会社の配当は円で出ます。外国株のように、円高・円安で受け取る額が変わることがありません。
- 情報が日本語で、公開された資料で確かめられる。 有価証券報告書や決算短信は、日本語で無料で公開されています。この記事の基準も、その資料の数字だけで判定しています。
- NISA の口座なら、配当にかかる税金がかかりません。 通常、国内株の配当には約2割の税金がかかりますが、NISA の口座で持てば非課税です(受け取り方法などの条件があります。制度は変わることがあるので、最新の内容は金融庁などの公式の情報で確認してください)。
ただし、メリットばかりではありません。高配当の会社も、業績が悪くなれば、配当を減らしたり、やめたりします。株価が下がることもあります。
そのため、高配当株は、利回り(株価に対する1年分の配当の割合)の数字だけで選ぶと、減配(配当が減ること)や無配(配当が出ないこと)の罠にはまりやすくなります。利回りが高いのは、株価が下がったからかもしれません。そこで当サイトでは、「配当を出し続けられる会社か」を、直近10年の決算で点検してから、個別の銘柄を紹介しています。
先に結論を書くと、見るのは次の2点です。
- 現金をきちんと稼いでいるか(①)と、配当を減らさずに続けてきたか(②)。この2つは必須で、どちらかがだめなら、他が良くても除外します。
- 残りの6項目(③〜⑧)は、会社の成長・稼ぐ力・財務の安定・配当の余力を見る、点数づけの項目です。
この記事は、その点検の基準をまとめたものです。個別の銘柄の記事では、ここで説明する基準を使っています。判定には、有価証券報告書(EDINET)に載っている数字だけを使い、同じ基準を全ての銘柄に当てます。
「優良」の判定は、記事を書いた時点の評価です。 この基準を満たした会社でも、その後の決算で営業CFが赤字になったり、減配したりすれば、優良株ではなくなります。逆に、今は基準を満たしていない会社が、あとから満たすこともあります。個別の銘柄の記事には、評価した日と、使った決算の期を書きます。読む時期が離れているときは、最新の決算で確かめ直してください。
8項目の全体像
決算は、会社の「通信簿」のようなものです。1年ごとの成績(1期)を10年分並べて、次の8項目で見ます。8項目は、必須の2項目と、得点の6項目に分かれます。表の「合格ライン」を満たすと○になります。この数字は、判定に使っているものそのままです。
必須の2項目(満たさなければ除外)
| # | 項目 | 見るもの | 合格ライン(○) |
|---|---|---|---|
| ① | 営業CF | 現金を稼げているか | 10期とも赤字なし |
| ② | 配当 | 配当が続いているか | 10期で減配なし |
この2つのどちらかが×なら、他の項目がどれだけ良くても、除外します(後述の「一発アウト」)。
得点の6項目(○を2点、△を1点で足す)
| # | 項目 | 見るもの | 合格ライン(○) |
|---|---|---|---|
| ③ | 売上高 | 会社が成長しているか | 前期より増えた期が7割以上で、全体の傾きが右肩上がり |
| ④ | 純利益 | 利益が積み上がっているか | ③と同じ |
| ⑤ | 営業利益率 | 本業の稼ぐ力 | 10期とも5%以上 |
| ⑥ | 自己資本比率 | 財務の安定 | 最新で40%以上 |
| ⑦ | 現金同等物 | 手元の余力 | 増加傾向 |
| ⑧ | 配当性向 | 配当の余力 | 最新で30〜50%(健全) |
各項目の見方
ここからは、1項目ずつ説明します。専門用語は、そのつど言い換えています。数字の図は、**考え方をつかむためのイメージ(架空の会社の数字)**です。実在の会社のものではありません。
① 営業CF — 利益が現金になっているか(必須)
営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)は、本業で実際に増えた現金のことです。家計にたとえると、「給料は出ているのに、手元の現金が増えていない」状態がありえます。会社でも、売った代金がまだ入ってこなかったり、在庫がふくらんだりすると、利益が出ていても現金は減ります。配当は現金で払うので、現金を稼げているかが土台になります。
**10期のうち1期でも赤字(0以下)があれば×**で、一発アウトです。10期分がそろわない場合は「要確認」にします。
- A社(○)
- B社(×)
② 配当 — 減配がないか(必須)
1株あたりの年間配当を10期分並べて、前期より2%を超えて減った期を「減配」と数えます(端数の誤差は除きます)。配当は、会社が株主に払うお金です。減配が少ないほど、配当を大事にしてきた会社といえます。
| 結果 | 条件 |
|---|---|
| ○ | 減配0回 |
| △ | 減配1回(特別配当・記念配当の反動かどうか、決算短信で確認) |
| × | 減配2回以上(一発アウト) |
無配の期がある、または配当のある期が10期に満たない会社は、×です。
③ 売上高と ④ 純利益 — 右肩上がりか
売上高は、会社が売った金額の合計です。純利益は、そこから費用や税金を引いて、最後に残った利益です。どちらも、10期の数字を並べて、前期より増えた期の割合と、全体の向き(傾き)を見ます。
| 結果 | 条件 |
|---|---|
| ○ | 増えた期が7割以上で、かつ全体の傾きがプラス |
| △ | 増えた期が5割以上で、かつ全体の傾きがプラス |
| × | それ以外 |
「毎年増え続ける」ことは求めていません。景気の波で1〜2期減っても、全体として伸びていれば○です。
- A社(○)
- B社(×)
④ は、1株当たり利益(EPS)ではなく純利益そのもので見ています。EPS は株式分割で過去の値が書き換わるので、決算期をまたぐ比較が難しいためです。
⑤ 営業利益率 — 本業で稼げているか
営業利益 ÷ 売上高です。100円売ったときに、本業で何円の利益が残るかを表します。たとえば5%なら、100円の売上で5円です。借入や投資の損益を除くので、本業の力が見えます。
| 結果 | 条件 |
|---|---|
| ○ | 10期とも5%以上 |
| △ | 最新は5%以上で、5%未満の期が2期以内 |
| × | それ以外 |
⑥ 自己資本比率 — 財務が安定しているか
会社が持っている財産(総資産)のうち、**借金ではなく、返さなくてよいお金(自己資本)**の割合です。高いほど、不況になっても倒れにくい会社です。最新の期で見ます。
| 水準 | 目安 |
|---|---|
| 80%以上 | 最高 |
| 60%以上 | 安心 |
| 40%以上 | 及第(○) |
| 40%未満 | 不足(×) |
⑦ 現金同等物 — 手元の余力
現金同等物は、すぐ使える手元の現金(預金など)です。10期の全体の傾きがプラスで、かつ最新の値が5期前より大きければ○です。配当を出すための現金が、積み上がっているかを見ます。
⑧ 配当性向 — 配当に余力があるか
稼いだ純利益のうち、配当に回している割合です。100円の利益のうち40円を配当にしていれば、40%です。高すぎると、利益が減ったときに配当を保てません。低すぎるのは、まだ余力があるということです。連結(子会社を含めた会社全体)の値で、最新の期を見ます。
| 配当性向 | 結果 | 点 |
|---|---|---|
| 30%未満 | ○(余力あり) | 2点 |
| 30〜50% | ○(健全) | 2点 |
| 50〜70% | △(注意) | 1点 |
| 70%超 | ×(危険) | 0点 |
総合判定の出し方
8項目の結果から、総合判定を ◎・○・× のどれかにします。
- 一発アウト: ① 営業CF か ② 配当 が × なら、他の項目にかかわらず × (除外)。
- 要確認: ① か ② のデータが取れなければ、○(要確認)にして、人が確かめます。
- 得点: ③〜⑧ の6項目で、○を2点、△を1点、×を0点として足します(最大12点)。
- ◎: 得点が満点の12点(③〜⑧ が全て○)で、注意の印がなく、② も○。1つでも△か×があれば、◎にはなりません。
- ○: 得点が7点以上。
- ×: 得点が7点未満。
得点と判定の関係は、次のとおりです。
| 得点(最大12点) | 判定 |
|---|---|
| 12点(満点) | ◎(ただし、注意の印がなく、② が○のとき) |
| 7〜11点 | ○ |
| 0〜6点 | × |
「注意の印」は、次のようなときに付けます。
- 10期に満たない。
- 会計基準が途中で変わった(日本基準からIFRSなど)。
- 株式分割の補正に確信が持てない。
◎は、この基準を満たしたという意味です。買い時や将来の値上がりを示すものではありません。
数え方のルール
同じ決算でも、数え方で結果が変わる点を、あらかじめ決めています。
- 配当は普通配当で数える。創立記念や特別の配当は、普通配当とは別に書きます。毎期続くとは限らないためです。有価証券報告書の1株当たり配当は記念・特別を含みうるので、個別の記事では、決算短信で内訳を確かめます。
- 株式分割・併合は補正する。分割で配当が半分に見えても、減配には数えません。発行済株式数の変化がきれいな分割比にならないときは、「補正が不確か」として、確認を促します。
- 配当性向は連結で見る。有価証券報告書の配当性向は提出会社(単体)の値で、持株会社では100%を超えることもあるため、連結の1株当たり利益で割り直します。
- 営業CF・配当は、取れない期を「問題なし」と読まない。取れなければ、要確認に回します。
データの出どころ
使う数字は、有価証券報告書(EDINET。金融庁)と、決算短信です。有価証券報告書の主要な経営指標等から、直近10期分の売上高・純利益・自己資本比率・営業CF・現金同等物・配当・配当性向を取り、営業利益は損益計算書から取ります。会社予想と配当予想は決算短信から取ります。
IFRSを使う会社は、営業利益の定義が日本基準と異なるため、③が取れないことがあります。その場合は、要確認として扱います。
この基準でわかること・わからないこと
わかること: 10年の実績で、利益が積み上がり、現金を稼ぎ、減配せずに配当を続けてきたか。
わからないこと:
- 記事を読む時点での評価。判定は、記事を書いた日までの決算に基づくので、その後の決算で結果が変わりえます。「いま優良」ではなく、「評価した日に優良だった」と読んでください。
- 今の株価が割安か。割安度は、予想利回りと過去の水準との比較が必要で、この基準には入っていません。個別の記事で、わかる範囲を書きます。
- 将来の配当。過去の実績は、将来の配当を保証しません。会社予想は、あくまで会社の見通しです。
- 業種ごとの事情。営業CFは、建設・設備工事のように、工事の入金時期で年ごとに大きく振れる業種では、赤字の期が出やすく、一発アウトになりやすい傾向があります。金融業は、営業利益や営業CFの意味が異なるため、そのままは当てはまりません。
試しに、ある条件で絞った135社に、この基準を当てたところ、×になった会社の約8割は、営業CFに赤字の期がある会社でした。建設・設備工事に多く見られました。基準が厳しすぎるのではなく、必須の項目として、そう働くように作っています。
まとめ — 判定の流れ
ここまでの内容を、判定の順番に並べると、次の図のとおりです。
必須の2項目で足切りをしてから、残りの6項目を点数にして、総合判定を出します。判定は、記事を書いた日までの決算に基づく評価なので、読む時期によって結果が変わりえます。
今後は、この基準に合う企業を、記事で紹介していきます。 個別の記事では、ここで説明した8項目の結果と、評価した日、使った決算の期を書きます。紹介は、特定の売買をすすめるものではありません。投資の判断は、ご自身の責任で行ってください。基準を変えたときは、この記事に記録します。
更新履歴
- 2026年10月20日: 初版。判定は、この日までに公表された決算に基づく。判定に使っている基準を、そのまま記載。基準を変えたときは、ここに記録して、記事を更新します。
- 2026年10月21日: 配当性向の得点のグラフを表の「点」の列に置き換え、末尾に「まとめ — 判定の流れ」の図を追加。
- 2026年10月21日: 導入に、国内の高配当株に投資するメリットを追加。まとめに、今後、基準に合う企業を記事で紹介していくことを追記。
数字は、公表された決算資料に基づく過去の実績です。将来の配当を保証するものではありません。
