株の情報サイトで「配当利回り」の高い順に並べてみると、目を引く数字がたくさん出てきます。毎年もらえる配当が、投資したお金に対してこれだけ多いなら、よさそうに思えるかもしれません。ところが、利回りの数字が高いことと、安心して持てることは別の話です。
この記事は、株を始めたばかりの人に向けて、利回りが高すぎるように見えるときに立ち止まって確かめたい5つのことを説明します。会社の例はすべて、説明のために私たちが作った架空の会社です。実在の会社や銘柄は取り上げません。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 利回りが高く見える、よくある3つの理由
- 決算の資料で確かめる5つのポイント
- 資料の探し先と、数字の読み方の順番
本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身でお願いします。
先に結論
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 利回りの高さ | 理由を確かめるまでは、良い悪いを決められない |
| 確かめること | 営業キャッシュフロー、配当性向、自己資本比率、特別配当の有無、過去の減配 |
| 調べ方 | 決算短信や有価証券報告書の数字を、数年分並べて見る |
配当利回りとは(先に用語の説明)
配当は、会社が稼いだお金の一部を、株を持っている人(株主)に分けるものです。配当利回りは、1株あたりの1年間の配当を、今の株価で割った割合です(私たちの一般的な説明です)。
配当利回り = 1年間の1株あたり配当 ÷ 今の株価
例: 配当 40円 ÷ 株価 1,000円 = 4%
配当 40円 ÷ 株価 500円 = 8%
同じ40円の配当でも、割る数である株価が小さくなると、利回りは大きく見えます。ここに、数字の見え方の落とし穴があります。
利回りが高く見える3つの理由
利回りが高く見えるときは、おおまかに次の3つのどれか(または重なり)であることが多いです。これは、私たちの一般的な整理です。
| 理由 | どういうこと | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1. 株価が下がった | 割る数(株価)が小さくなり、利回りが大きく見える | 株価が下がった理由が、業績の悪化かもしれない |
| 2. 特別な配当が入っている | 記念配当などの、その年だけの上乗せがある | 来年は同じ額が出ないかもしれない |
| 3. 減配の前の水準 | 業績が苦しいのに、配当を前の額のまま出している | 配当が減らされる(減配)可能性がある |
架空の例で、1つ目の「株価が下がった」を見てみましょう(私たちの例です)。
| 会社(架空) | 1株配当 | 株価 | 配当利回り |
|---|---|---|---|
| A社(株価が安定) | 40円 | 1,000円 | 4% |
| B社(株価が半分になった) | 40円 | 500円 | 8% |
B社は、配当の額が変わらなくても、株価が下がっただけで、利回りの数字が2倍に見えます。株価が半分になるのは、市場が「この会社の先行きは心配だ」と見ているサインかもしれません。もちろん、一時的な下落のこともあります。だからこそ、次の5つで中身を確かめます。
確かめる5つのこと
決算の資料の数字は、1年分だけでなく、数年分を並べて見ます。1年だけでは、たまたまなのか、続いている傾向なのかが分からないからです。
① 営業キャッシュフローが黒字か
営業キャッシュフロー(営業CF)は、本業で実際に入ってきたお金から出ていったお金を引いた、現金の増減です。利益は帳簿上の数字ですが、営業CFは現金の動きなので、「配当を払うための現金が本当にあるか」を見るのに役立ちます。
見るポイントは、営業CFがプラスか、そして配当の総額をまかなえているかです。営業CFが小さくなっているのに配当が同じ額のままだと、続けるのが苦しくなっている可能性があります。
② 配当性向が高すぎないか
配当性向は、会社が稼いだ利益(純利益)のうち、どれだけを配当に回しているかの割合です(私たちの一般的な説明です)。
配当性向 = 配当の総額 ÷ 純利益
100%を超えていると、その年に稼いだ以上の額を配当に回している状態です。短い期間なら起こりえますが、続くと会社の体力を削ります。ただし、どのくらいなら高いかは、業種や会社の方針で違います。数字だけで決めつけず、数年分の動きで見ます。
③ 自己資本比率が低すぎないか
自己資本比率は、会社の資金のうち、返さなくてよい自分のお金(自己資本)がどれだけあるかの割合です。低いと、借りたお金への依存が大きく、景気が悪くなったときに配当より返済が優先されやすくなります。
こちらも、業種によって標準的な水準が大きく違います。同じ業種の中で比べたり、数年の変化を見たりします。
④ 特別配当・記念配当が入っていないか
配当には、毎年出すことを前提にした普通配当と、その年限りの特別配当・記念配当があります。決算短信や配当の予想の欄に、内訳が書かれています。特別配当を含めた数字で利回りを出すと、翌年は低くなるかもしれません。利回りは、普通配当だけで計算し直して見ると、実力に近い数字になります。
⑤ 過去に減配していないか
配当の推移を数年分並べて、減った年がないかを見ます。何度も減配している会社は、配当が安定していない可能性があります。逆に、長く減らさずに続けている会社は、方針としては安定していると考えられます。ただし、過去の実績は将来を約束しません。
5つの確認の早見表
| 確認 | 見る資料 | 注意のサイン(私たちの目安) |
|---|---|---|
| ① 営業CF | 決算短信、有価証券報告書 | マイナス、または配当の総額より小さい |
| ② 配当性向 | 決算短信 | 100%を超える年が続く |
| ③ 自己資本比率 | 決算短信 | 同じ業種の中で目立って低い、下がり続けている |
| ④ 特別配当 | 配当の予想・内訳の欄 | 特別配当や記念配当を含んでいる |
| ⑤ 過去の減配 | 配当の推移の表 | 減配の年が何度もある |
「注意のサイン」は、私たちが読み方の目安として作ったもので、投資の基準や判断の結論ではありません。
架空の例で見る、営業CFと配当の10期の動き
①の営業CFと配当の関係を、架空のC社の10期分で見てみます。これは説明のための私たちの例で、実在の会社の数字ではありません(単位も架空の「億円」です)。
- 営業CF
- 配当の総額
| 期 | 営業CF(億円) | 配当の総額(億円) | 営業CFが配当を上回るか |
|---|---|---|---|
| 1期 | 30 | 10 | 上回る |
| 2期 | 28 | 10 | 上回る |
| 3期 | 25 | 10 | 上回る |
| 4期 | 22 | 10 | 上回る |
| 5期 | 18 | 10 | 上回る |
| 6期 | 15 | 10 | 上回る |
| 7期 | 12 | 10 | 上回る |
| 8期 | 9 | 10 | 下回る |
| 9期 | 7 | 10 | 下回る |
| 10期 | 5 | 10 | 下回る |
C社は、配当の総額を10億円のまま出し続けていますが、営業CFは少しずつ減って、8期目から配当の総額を下回っています。10期目だけを見ると配当は変わっていないので、利回りの数字は高いままに見えます。数年分を並べて初めて、営業CFが減り続け、8期目以降は営業CFだけでは配当の総額をまかなえていない流れが見える例です。営業CFはすべてプラスなので、現金が減っているとまでは言えません。
資料の探し方
必要な数字は、会社が公表する資料に載っています。
| 資料 | どこで見るか | 分かること |
|---|---|---|
| 決算短信 | 適時開示の閲覧サービス(TDnet)や、会社のIRページ | 最新の決算、配当の予想と内訳 |
| 有価証券報告書 | 金融庁のEDINET | 数年分の経営指標の推移、営業CF |
この記事の末尾に、出典としてEDINETとTDnetのトップページを載せています。実際の見方は、当サイトの高配当株の8つの基準の記事にも、判定に使う数字とあわせてまとめています。
用語のまとめ
| 用語 | 意味(私たちの一般的な説明) |
|---|---|
| 配当利回り | 1年間の1株あたり配当 ÷ 株価 |
| 営業キャッシュフロー | 本業で入ってきた現金の増減 |
| 配当性向 | 純利益のうち配当に回す割合 |
| 自己資本比率 | 資金のうち、返さなくてよいお金の割合 |
| 普通配当と特別配当 | 毎年出す前提の配当と、その年限りの上乗せ |
| 減配 | 配当の額を前より減らすこと |
わからないこと・この記事の限界
- 数字が「注意のサイン」にあてはまっても、配当が減るとは限りません。逆に、あてはまらなくても減ることはあります。
- 業種や会社の方針で、適切な水準は変わります。
- この記事は、読み方の入口を説明するものです。個別の銘柄をすすめる、または避けるよう伝えるものではありません。
まとめ
- 利回りの数字が高いのは、株価の下落、特別な配当、減配の前の水準など、理由はさまざまです。
- 営業CF、配当性向、自己資本比率、特別配当の有無、過去の減配の5つを、数年分並べて確かめます。
- 1年分でなく数年分の流れで見ると、営業CFが減って配当をまかなえなくなっているなどの変化に気づきやすくなります。
- 数字の目安は判断の材料にとどめ、最終的な判断はご自身で行います。
