株の注文を出したのに、すぐに成立しなかった。あとから出した人の注文のほうが先に成立したように見えた。こんな経験や疑問を持つ人は少なくありません。
株の売買は、「早い者勝ち」だけで決まっているわけではありません。東京証券取引所(東証)には、どの注文から成立させるかを決める決まりがあります。この記事は、株を始めたばかりの人に向けて、東証を運営するJPX(日本取引所グループ)の公表内容をもとに、その決まりをやさしく説明します。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 注文が成立する順番の決まり(価格優先・時間優先)
- 成立のさせ方が2つあること(ザラバ方式・板寄せ方式)
- 成行注文と指値注文の違い
本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身でお願いします。
先に結論(3つだけ)
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 成立の順番 | まず「値段」で決まり、同じ値段なら「出した時間」で決まる(価格優先の原則・時間優先の原則) |
| 成立のさせ方 | 立会の開始時と終了時は「板寄せ方式」、その間は「ザラバ方式」 |
| 注文の種類 | 成行注文は「値段を問わない」注文、指値注文は「値段を決めて出す」注文 |
注文の2つの基本(成行と指値)
JPXによると、注文には基本的に、成行(なりゆき)注文と指値(さしね)注文があります。
| 注文の種類 | JPXの説明 | 私たちのたとえ |
|---|---|---|
| 成行注文 | どの値段でもよいから、買いたい・売りたいという注文 | 「いくらでもいいので買います」と言う |
| 指値注文 | ○○○円(以下)で買いたい、○○○円(以上)で売りたいという注文 | 「この値段なら買います」と値札を決めて言う |
JPXは、この2つのほかに、寄付条件付注文、引条件注文、不成注文、IOC注文といった、執行の条件を付けた注文があることも紹介しています。この記事では、基本の2つを中心に説明します。
指値注文で選べる値段の間隔については、呼値の単位の記事で整理しています。
成立の順番の決まり
JPXは、東証の売買を「競争売買」と説明しています。売りたい人どうし、買いたい人どうしが競い合い、最も優先される売りの注文と買いの注文が、ある値段で合ったときに売買が成立する方法です。
この競争のルールが、次の2つの原則です。
| 原則 | 内容(JPXの説明を要約) |
|---|---|
| 価格優先の原則 | 売りは値段の低い注文が、買いは値段の高い注文が、それぞれ優先される |
| 時間優先の原則 | 同じ値段の注文では、先に出した注文が優先される |
順番は、「まず価格、次に時間」です。
注文が出される
│
▼
① 値段を比べる(価格優先)
売り … 安いほうが先
買い … 高いほうが先
│
▼ 同じ値段のときだけ
② 出した時間を比べる(時間優先)
先に出した注文が先
この図は、順番の考え方を伝えるための私たちの整理です。
価格優先の例(JPXの例)
JPXのページには、次の例があります。売りの注文に100円、101円、102円、103円があるとき、「安く売ってもよい」という100円の売り注文が優先されます。買いの注文のほうは、同じ値段に対して「高くても買いたい」という103円の買い注文が優先されます。
| 優先されるもの | 理由 | |
|---|---|---|
| 売りの注文(100円・101円・102円・103円) | 100円 | 安く売ってもよい注文が先 |
| 買いの注文(同じ値段に対して) | 103円 | 高くても買いたい注文が先 |
売る側は「より安く」、買う側は「より高く」と言ってくれる相手が、取引の相手として選ばれやすくなる、と考えると覚えやすくなります。これは私たちの一般的な説明です。
また、JPXによると、成行注文は「いくらでもよい」という注文なので、値段を指定した注文(指値)よりも優先されます。
時間優先の例(JPXの例)
同じ値段の注文では、先に出した注文が先です。JPXの例では、100円の買い注文に、A取引参加者の10万株と、B取引参加者の1万株があり、A取引参加者の注文が先に出ていたとします。このとき、Aの10万株がすべて成立したあとで、Bの1万株が成立します。
| 順番 | 100円の買い注文 | 数量 |
|---|---|---|
| 1番目 | A取引参加者(先に出した) | 10万株 |
| 2番目 | B取引参加者(あとに出した) | 1万株 |
「取引参加者」は、証券会社などのことです。私たち個人投資家の注文は、証券会社を通して東証に届きます(私たちの一般的な説明)。
時間優先に例外がある(同時呼値)
JPXによると、時間優先には例外があります。午前と午後の取引の開始時や、売買が止まったあとの最初の値段を決めるときは、それまでに出されたすべての注文が「同時に出されたもの」として扱われます。この場合は、次に説明する「板寄せ方式」で成立します。
成立のさせ方は2つ(ザラバと板寄せ)
JPXによると、東証の売買は個別競争売買で行われ、成立のさせ方に「板寄せ方式」と「ザラバ方式」の2つがあります。
| 板寄せ方式 | ザラバ方式 | |
|---|---|---|
| いつ使うか | 立会の開始時、立会の終了時、売買の中断後の再開時、特別気配・連続約定気配の表示時 | 上記以外(寄付きと引けの間など) |
| 値段の決まり方 | 売り注文と買い注文から、合う値段を求め、その値段が単一の約定値段になる | 価格優先・時間優先の原則に従い、合ったものから順に成立する |
「立会(たちあい)」は、売買ができる時間帯のことです(私たちの一般的な説明)。取引時間は、東証の取引時間と売買単位にまとめています。
2つの方式のちがい(図で確認)
次の図は、2つの方式のイメージを、私たちが整理したものです。
【板寄せ方式】 … 注文をいったん集めて、1つの値段で一斉に成立させる
売り注文 ┐
├→ 合う値段を1つ求める → その値段で成立
買い注文 ┘
【ザラバ方式】 … 合った注文から、順番に成立させる
注文A(売り) ←→ 注文B(買い) … 成立
注文C(売り) ←→ 注文D(買い) … 成立
(価格優先・時間優先の順に、次々と)
終わりの時間帯のしくみ(クロージング・オークション)
JPXによると、東証は終値を決めるときの透明性を高めるため、後場の終わりに「クロージング・オークション」を導入しています。流れは、次の表のとおりです。
| 時刻 | 起きること |
|---|---|
| 午後3時25分 | ザラバが終わり、5分間の注文受付(プレ・クロージング)が始まる |
| 午後3時25分〜30分 | 注文の受付だけを行う。売買は成立しない。新しい注文や、既存の注文の変更・取消はできる(執行条件の変更は不可) |
| 午後3時30分 | 板寄せを行い、終値が決まる |
覚えておきたい場面(私たちの一般的な整理)
ここからは、JPXの説明ではなく、私たちの一般的な整理です。
| 場面 | 知っておくと役に立つこと |
|---|---|
| 成行注文を出すとき | 値段を問わないぶん、思わぬ値段で成立することがあります。JPXも、値段が次々に動くと「思わぬ値段で売買が成立してしまう可能性」があると説明しています |
| 指値注文を出すとき | 出した値段より有利な相手が現れるまで、成立しないことがあります |
| 同じ値段の注文が多いとき | 先に出した注文から成立します。あとから出すと、順番が後ろになります |
| 取引の開始時・終了時 | 板寄せ方式で、1つの値段で一斉に成立します |
値段が大きく動くときの仕組みとして、JPXは「特別気配」と「連続約定気配」という制度も紹介しています。1日に動ける値段の幅の上限については、ストップ高・ストップ安の記事で整理しています。
用語のまとめ
| 用語 | やさしい説明 |
|---|---|
| 競争売買 | 売りの注文どうし、買いの注文どうしが競い、合ったときに成立させる方法 |
| 価格優先の原則 | 売りは安い注文、買いは高い注文が先 |
| 時間優先の原則 | 同じ値段なら、先に出した注文が先 |
| 同時呼値 | 時間の先後をつけず、同時に出されたものとして扱う注文 |
| ザラバ方式 | 合った注文から順に成立させる方式 |
| 板寄せ方式 | 注文を集めて、1つの値段で一斉に成立させる方式 |
| 成行注文 | 値段を問わない注文 |
| 指値注文 | 値段を決めて出す注文 |
まとめ
- 注文が成立する順番は、「まず価格(売りは安い順、買いは高い順)、同じ値段なら時間(先に出した順)」です。
- 成行注文は、値段を指定した注文(指値)よりも優先されます。
- 成立のさせ方は2つあり、立会の開始時と終了時などは板寄せ方式、それ以外はザラバ方式です。
- 午後3時25分から30分までは、注文の受付だけが行われ、3時30分の板寄せで終値が決まります。
実際の注文の扱いは、ご利用の証券会社の案内も合わせて確かめてください。
